イタリアではワインはもちろん日常的に楽しまれていますが、アペリティーヴォと呼ばれる食前酒を飲んだり、 リキュールやグラッパを食後酒として楽しむ習慣があります。その中でも、リキュールはバールやレストランでも食後に楽しみますが、家庭でも食事の最後に振る舞われ、各家庭でリキュールを手作りしていることも珍しくありません。また、イタリアでは各地にその土地独特のリキュールがあり、その味わいや歴史に出会うのも楽しみの一つです。
ここサルデーニャ島では、ミルトという実から、島の伝統的なミルトリキュールが昔から作られています。このリキュールは地元の人にはミルトの名前で親しまれていて、地中海のハーブのような香りと味わいが特徴です。みると飲みだけではなく、その葉も香りがとても良く、伝統料理の豚や羊のグリルの時に、香り付などに使われます。
このリキュールには大量生産で手頃に買えるものから、生産者が原材料や作り方にもこだわって少量生産で作ったクラフトリキュール、もちろん家庭で作られる手作りのリキュールなど様々なものがあります。
ここでご紹介するのは、サルデーニャ島のリキュール好きをもうならせるような、サルデーニャ島の小さな村で、最高品質の天然素材と製法にこだわり、少量生産で丁寧に作られた本格的クラフトリキュールです!
左:生産者のピエラ
右:オルゴーゾロ・リクォーリのリキュール
サルデーニャ島、バルバージャ地方にある壁画(ムラーレス)で有名な山間の小さな村オルゴーゾロ。美しい高い山々に囲まれ、手つかずの豊かな自然に恵まれたこの村は、野生の植物や農産物が豊富で山間地帯独特の昔ながらのサルデーニャらしさを残した独特で魅力的な雰囲気があります。
オルゴーゾロは壁画の村としても有名で、村を歩いていると、建物の壁にはいたるところに壁画に溢れていて、 まるで村全体がギャラリーのような独特な趣のある雰囲気が楽しめます。
その村の入り口にひっそりと佇む黄色の壁にMirto(ミルト)と描かれた小さな建物がOrgosolo Liquori(オルゴーゾロ・リクォーリ)です。ここでは、サルデーニャ島に伝わる伝統的なミルトリキュールをはじめ、オリジナルのクラフトリキュールを丁寧に一つずつ生産しています。
オルゴーゾロ・リクォーリの建物
Orgosolo Liquori(オルゴーゾロ・リクォーリ)の建物の中には、お店とリキュール作りのラボラトリーが併設されていて、この村の女性生産者ピエラ・カディーヌが村から取れた無農薬、高品質の天然素材にこだわりながら、村で生産された香り高いレモンや、味わいの深い野生のミルトベリーを原材料に、サルデーニャの伝統的技法を守りながらクラフトリキュールを一つ一つ丁寧に生産しています。
そのリキュールの味わいは豊かでみずみずしく、天然素材とサルデーニャの風土がギュッと詰まったような、一度味わうと忘れられない豊かな味わいです。
その他にも野草の花を原材料にしたエリクリーゾの花のリキュールや、黄金色で香りの高いオルゴーゾロのサフランを使ったリキュールなど、新しいアイディアで 素晴らしい製品を生み出しています。
また味わいだけではなく、ピエラのサルデーニャや自分の村を誇りに思う気持ちが村の壁画ムラーレスを使ったリキュールのラベルにも表現されていて、そのカラフルなボトルデザインのセンスの良さも目を引きます。一つ一つのボトルの壁画の絵を眺めながらこのクラフトリキュールを味わっていると、まるでオルゴーゾロ村を旅しているような気分になります。
村のムラーレス(壁画)
オルゴーゾロ村の伝統的な壁画の初期のムラーレスは1960年代に遡り、現在でも新しいムラーレスの製作が続いています。村のアーティストだけではなく、サルデーニャ島やイタリア国内外のアーティストによって描かれた壁画のテーマは、サルデーニャの地元やイタリア国内、インターナショナルに関わるものなど幅広く、その題材には政治、経済、社会問題、政府への批判などのメッセージが込められていることも多くあります。オルゴーゾロ村には300以上のムラーレスの作品が点在していると言われています。
オルゴーゾロ・リクォーリのクラフトリキュールの紹介とともに、ここではラベルの解説も少しだけお届けします。
左:ミルトベリー
右:ムラーレスの人物は、ファブリッツィオ・デ・アンドレ
ミルトはサルデーニャ島の伝統的なリキュールで、島の中ではどこに行っても振舞われる日常的なお酒です。オルゴーゾロ・リクォーリではオルゴーゾロで育つ野生のミルトベリーを手摘みで収穫し、丁寧に手作業で作っています。材料にこだわったその香りと味わいは格別で、野性的なミルトには地中海のハーブのような独特で印象的な香りや味わいがあります。 ミルトのボトルには8種類の壁画のラベルがあり、オルゴーゾロ・リクォーリのミルトへの熱い想いが込められています。
*ファブリッツィオ・デ・アンドレへのオマージュ
ムラーレスの人物は、ファブリッツィオ・デ・アンドレ。1940年にイタリアのジェノヴァに生まれ、18歳から1999年の死去まで音楽活動を続けたイタリアの全ての音楽に影響を与えたシンガーソングライターで詩人でもある偉大なミュージシャンです。今でもたくさんの人から支持されているデ・アンドレは1980年サルデーニャで盗賊に拉致され、何ヶ月もサルデーニャの山岳に幽閉されていたことがあります。身代金が支払われ、後に解放されましたが、その事実を慈悲とともに許し、その経験をインスピレーションとして素晴らしいアルバム制作し、その時に「サルデーニャでの生活は人間が望むもっとも素晴らしいものだ。」という言葉をデ・アンドレは残しました。
左:天然のレモン
右:アメリカ先住民族のテーマ
オルゴーゾロの高地で育った無農薬の天然レモンを手摘みで収穫し、一つ一つ丁寧に皮をむいてから作られる香りと味わいが素晴らしいクラフトレモンリキュールです。グラスに注ぐと爽やかなレモンの皮の香りがいっぺんに広がり、まるでレモン畑の中にいるような気分になります。口に含むとその香りを裏切らないフレッシュでジューシーな味わいが口の中でいっぺんに広がります。
*アメリカ先住民族
ここにはアメリカ先住民族シウ・オグララの酋長トロ・レントが白人から騙されたというエピゾードが描写されています。「白人がある日紙を持ってきて、私たちにサインをするようにと言ってきた。英語を学んだ後に分かったのは自分達が土地をなくしたという事実だった。」という彼の言葉が題材になっています。
左:野生のエリクリーゾの花
右:幸せとは英雄がいらない国
オルゴーゾロで採取されたエリクリーゾという野生の花を使ったリキュール。花の香りが漂うスパイシーでハーブのような香りと味わいが魅力的です。 エリクリーゾを原材料にしたサルデーニャでもとても珍しいクラフトリキュールです。
*幸せとは英雄がいらない国である
このムラーレスはベルトルド・ブレフトというドイツ人の劇作家、詩人、演出家「幸せとは英雄がいらない国である。」の言葉を元に描かれています。自分たちの男達を戦争に送らない国には平和が約束されているという、戦争に対する強い批判が込められています。
左:オルゴーゾロのサフラン
右:オルゴーゾロの民族衣装
サルデーニャ島は高品質で香りの高いサフランの生産でも知られています。ザフェラーノはオルゴーゾロで育つ手摘みのサフランを使った贅沢なクラフトリキュールで、美しいゴールドカラーと、サフランの香り高い豊かな味わいが魅力です。サルデーニャ産のサフランをたっぷり原材料に使った、島の香りをお楽しみください。
*オルゴーゾロの民族衣装
サルデーニャでは各地に村ごとの美しい民族衣装があります。そのデザインには村ごとの特徴がそれぞれあり、オルゴーゾロではサフランが女性の民族衣装に使う絹のベールを黄色や黄金色に染める染色の色素として伝統的に使われてきました。オルゴーソロ・リクォーリのサフランリキュールはオルゴーソロの女性の民族衣装に捧げられて作られ、ラベルではモナリザがオルゴーゾロの民族衣装を着て微笑んでいて、とてもユーモアのあるデザインです。